火澤睽

かたくけい

考えや向きがすれ違って、噛み合わなくなっている時

上卦:離(火) 下卦:兌(澤)

卦辞 ― この卦全体のことば

白文睽、小事吉。

書き下し睽(けい)は、小事(しょうじ)に吉(きち)。

やさしく読み解くと

今のあなたの周りには、人と人の気持ちや方向が少しずつ食い違って、距離ができてしまう——そんな空気が流れているようです。

火は上へ昇り、水は下へ流れていく。同じ場所にいても、向いている方向が逆になっていく、そういうイメージですね。

気心が知れていたはずの相手と話が噛み合わない時、恋人や家族との間にすきま風を感じる時、職場で意見がぶつかって溝ができている時に、この卦はよく出ます。

ただ、覚えておいてほしいのは、この卦は「もうダメ」と言っているわけではないんです。

大きなことを一気に押し通すのは難しくても、小さなことなら、ちゃんとうまくいく。すれ違いは、こじらせれば深まりますが、小さなところから合わせ直していけば、ほどけてもいくものです。

そして、その溝が広がるか、それとも歩み寄りに変わるかは、あなたが今どの段階にいるかで変わってきます。だから、この先の「今いる段階」が、いちばんの答えになりますよ。

六つの爻辞 ― 段階ごとのことば

卦には、下から上へ六本の「爻(こう)」があります。同じ卦でも、どの爻に注目するかで場面が変わっていく——一つの物語の六つの場面だと思ってください。下から順に見ていきましょう。

いちばん下の爻

初九(しょきゅう) ― いちばん最初の段階

白文悔亡、喪馬勿逐、自復。見惡人无咎。

書き下し悔(く)い亡(ほろ)ぶ。馬を喪(うしな)うも逐(お)う勿(なか)れ、自(おの)ずから復(かえ)る。悪人(あくにん)を見るも咎(とが)无(な)し。

やさしく読み解くと

ひとことで言うと
離れていくものは追わない。そうすれば、後悔せずに済む段階かもしれません。
今は、こんな時
逃げた馬を必死に追いかけても捕まらない。でも放っておけば、自分から戻ってくる——今はそんな時かもしれません。離れていく人やものを、引き止めようと焦っていませんか?連絡が減った友人、距離を置きたそうな恋人、急に冷たくなった相手。あるいは、どうにも気が合わない人、苦手な相手と顔を合わせなきゃいけない場面。そんな心当たり、ありませんか?
とるべき行動
離れていくものは、いったん手を離してみるのがよさそうです。追えば追うほど逃げるもので、力を抜けば自然に戻ってくることもありますから。そして、気の合わない相手とも、無理に拒んだり敵視したりしないこと。そういう相手と関わっても、咎められるような悪い事にはなりません。会うべき時は淡々と会っておく、それで大丈夫ですよ。
気をつけたいこと
「なんで離れていくんだ」と追いすがったり、苦手な人を露骨に避けたりすると、かえって溝が深まります。今は、ぐっと力を抜くこと。離れる自由も、合わない相手がいることも、まず認めてあげてください。

この爻が陰陽反転すると、卦は火水未濟(かすいびせい)に変わります(之卦)。

下から2番目の爻

九二(きゅうじ)

白文遇主于巷、无咎。

書き下し主(しゅ)に巷(ちまた)に遇(あ)う。咎(とが)无(な)し。

やさしく読み解くと

ひとことで言うと
思わぬ場所での、ふとした出会いが糸口になる段階のようです。
今は、こんな時
かしこまった場ではなく、路地でばったり会うような——そんな偶然の再会や接点から、こじれていたものがほどけ始める時です。正面から話し合おうとすると身構えてしまう相手と、たまたま同じ現場になった、ふとした立ち話で打ち解けた、第三者を介して縁がつながった。そんなきっかけ、巡ってきていませんか?
とるべき行動
形式ばった場をわざわざ用意しようとせず、自然な接点を大事にしてみるといいと思いますよ。きちんと段取りを組むより、ふとした機会をすっと拾うほうがうまくいく時です。こうして思わぬ所で歩み寄れても、何も咎められることはありませんから、安心して一歩踏み出してみてください。
気をつけたいこと
「正式に話の場を設けないと失礼かな」と構えすぎると、かえってタイミングを逃します。今は堅苦しさを脇に置いて、巡ってきた偶然を逃さないことのほうが大切ですよ。

この爻が陰陽反転すると、卦は火雷噬嗑(からいぜいごう)に変わります(之卦)。

下から3番目の爻

六三(りくさん)

白文見輿曳、其牛掣、其人天且劓、无初有終。

書き下し輿(くるま)の曳(ひ)かるるを見る、其の牛は掣(ひ)かれ、其の人は天(てん)せられ且(か)つ劓(はなき)らる。初め无く終わり有り。

やさしく読み解くと

ひとことで言うと
最初は妨げられて散々でも、終わりにはちゃんと通じる段階かもしれません。
今は、こんな時
進もうとする車は後ろに引き戻され、牛は横から引っぱられ、思うように前に出られない——そんな、何をやっても邪魔が入るような時にいませんか?話を進めようとすると横やりが入る、誤解されて責められる、味方だと思っていた人に足を引っぱられる。理不尽な目に遭って、心が傷つくこともあるかもしれません。今はそういう、苦しい局面なんだと思います。
とるべき行動
それでも、ここで投げ出さないでほしいんです。この段階は、初めはうまくいかなくても、最後にはちゃんと通じると原典が告げています。今の妨げは、終わりまで続くものではありません。耐えて、誠実さを手放さずに進んでみてください。報われる時が、ちゃんと来ますよ。
気をつけたいこと
理不尽さに腹を立てて、相手とぶつかったり、途中で全部投げ出したりすると、その「終わりの実り」を自分で手放すことになります。いちばんつらいのは最初。そこを越えれば流れは変わると、信じて大丈夫です。

この爻が陰陽反転すると、卦は火天大有(かてんたいゆう)に変わります(之卦)。

下から4番目の爻

九四(きゅうし)

白文睽孤、遇元夫、交孚、厲无咎。

書き下し睽(そむ)きて孤(こ)なり。元夫(げんぷ)に遇(あ)い、孚(まこと)を交わす。厲(あや)うけれども咎(とが)无(な)し。

やさしく読み解くと

ひとことで言うと
孤立の中で、本物の理解者に出会える段階のようです。
今は、こんな時
周りと噛み合わず、ぽつんと一人になってしまった——でも、そんな孤独のただ中で、心から信じ合える相手にめぐり会う。今はそんな時かもしれません。職場で浮いている、グループの中で居場所がない、誰にも分かってもらえない気がする。そんな心細さの中で、ふと「この人は分かってくれる」と思える誰かが現れる。そんな兆し、感じていませんか?
とるべき行動
心が通じると感じた相手とは、思い切って誠実に向き合ってみるといいと思いますよ。お互いに正直な気持ちを交わすこと——それが、孤立を抜ける道になります。たしかに今は危なっかしい状況ですが、誠を交わせば、咎められるような悪い結果にはなりません。一人で抱え込まず、信じられる相手と手を結んでください。
気をつけたいこと
「どうせ誰も分かってくれない」と心を閉ざしてしまうと、せっかくの出会いも逃します。孤独な時こそ、差し出された手を疑いすぎないこと。本物の相手を見極めたら、そこには素直に応えていきましょう。

この爻が陰陽反転すると、卦は山澤損(さんたくそん)に変わります(之卦)。

下から5番目の爻

六五(りくご)

白文悔亡、厥宗噬膚、往何咎。

書き下し悔(く)い亡(ほろ)ぶ。厥(そ)の宗(そう)膚(はだ)を噬(か)む。往(ゆ)くも何の咎(とが)あらん。

やさしく読み解くと

ひとことで言うと
身内と深く打ち解けて、進んでよし。後悔の消える段階かもしれません。
今は、こんな時
柔らかい肌に歯がすっと入るように、身内や仲間と隔てなく親しく通じ合える——そんな、わだかまりがほどけていく時です。長くぎくしゃくしていた家族と打ち解けた、チームの結束がぐっと強まった、信頼できる仲間が力を貸してくれる。これまでのすれ違いが嘘のように、心が通い始めている。そんな手応え、ありませんか?
とるべき行動
もしそうなら、信頼できる身内や仲間とともに、思い切って前へ進んでいい時です。ここで進んでも、何の咎もありません——むしろ、心を許せる相手と組むことで、ものごとが大きく動きます。遠慮せず、その人たちと一緒に踏み出してみてください。
気をつけたいこと
せっかく通じ合えた相手を、疑ったり遠慮しすぎたりして、また距離を取ってしまわないこと。今は信じて頼っていい時です。打ち解けられた縁を、大切に育てていきましょう。

この爻が陰陽反転すると、卦は天澤履(てんたくり)に変わります(之卦)。

いちばん上の爻

上九(じょうきゅう) ― いちばん最後の段階

白文睽孤、見豕負塗、載鬼一車、先張之弧、後說之弧、匪寇婚媾、往遇雨則吉。

書き下し睽(そむ)きて孤(こ)なり。豕(いのこ)の塗(どろ)を負(お)うを見、鬼(き)を一車(いっしゃ)に載(の)するを見る。先には之(これ)が弧(ゆみ)を張り、後には之が弧を說(と)く。寇(あだ)に匪(あら)ず、婚媾(こんこう)せんとす。往(ゆ)きて雨に遇(あ)えば則ち吉(きち)。

やさしく読み解くと

ひとことで言うと
疑心暗鬼の極み。でも、誤解さえ解ければ和解に変わる段階かもしれません。
今は、こんな時
泥をかぶった豚や、鬼を乗せた車——そんな不気味なものが見えて、相手を敵だと思い込み、思わず弓を引いてしまう。でもよく見れば、それは仇ではなく、縁を結ぶべき相手だった。今はそんな、疑いが膨らみきった時かもしれません。相手の言動を全部悪く受け取ってしまう、被害妄想のように勘ぐってしまう、ささいなことで「攻撃された」と感じる。すれ違いがこじれて、ありもしない敵をつくっていませんか?
とるべき行動
ここでいったん、引いていた弓を下ろしてみてください。相手は本当に敵なのか、それとも自分の疑いがつくり出した幻なのか——少し落ち着いて見直すこと。誤解さえ解ければ、争いはやみ、雨が降って空気が澄むように、かえって良い縁へと変わります。思い込みを手放した先に、和解が待っていますよ。
気をつけたいこと
疑いに任せて先に攻撃してしまうと、本当なら結べたはずの縁まで壊してしまいます。「これは自分の勘ぐりかもしれない」と一度立ち止まること。極まったすれ違いは、ほどけ方も劇的です。最後まで、相手を敵と決めつけないでくださいね。

この爻が陰陽反転すると、卦は雷澤歸妹(らいたくきまい)に変わります(之卦)。

白文は朱熹『周易本義』系の経文(中國哲學書電子化計劃 ctext.org・パブリックドメイン)、書き下しは当サイトによる訓読です。

読んで学ぶのもいいですが、易は「自分の問いで引いてみる」と、ぐっと身近になりますよ。

占ってみる