地水師
大勢をまとめて、一つの方向へ動かしていく時
上卦:坤(地) 下卦:坎(水)
白文師、貞、丈人、吉无咎。
書き下し師(し)は、貞(ただ)し。丈人(じょうじん)なれば、吉(きち)にして咎(とが)无(な)し。
やさしく読み解くと
今のあなたの周りには、たくさんの人や物事を束ねて、規律をもって一つの目標に向かわせる——そんな「統率」の空気が流れているようです。
地の下に水が集まり、やがて大きな流れになっていくようなイメージですね。
チームやプロジェクトを率いる立場になった時、家族や仲間をまとめる役を任された時、長く続く戦い(受験・転職活動・闘病・大きな仕事)に挑む時に、この卦はよく出ます。
ただ、軍を率いることが力になるか、それとも痛手になるかは、規律があるか、人を率いる順番を間違えないかで大きく変わってきます。
だからこの卦のテーマは「組織を率い、規律で動かすこと」。ただし、それが吉と出るか凶と出るかは、あなたが今どの段階にいるかで変わってくるんです。
この先の「今いる段階」が、いちばんの答えになりますよ。
六つの爻辞 ― 段階ごとのことば
卦には、下から上へ六本の「爻(こう)」があります。同じ卦でも、どの爻に注目するかで場面が変わっていく——一つの物語の六つの場面だと思ってください。下から順に見ていきましょう。
初六(しょりく) ― いちばん最初の段階
白文師出以律、否臧凶。
書き下し師(いくさ)出(い)づるに律(りつ)を以(もっ)てす。否(しか)らざれば臧(よ)きも凶(きょう)。
やさしく読み解くと
- ひとことで言うと
- 動き出す前に、まず「ルール」を整えておきたい段階かもしれません。
- 今は、こんな時
- 大勢で何かを始めようとする、その最初の一歩——軍が出発するには、まず規律がいりますよね。それと同じで、今は勢いやノリで走り出す前に、土台のルールや段取りを固めておくべき時…なんてこと、ありませんか?新しいチームを立ち上げたばかり、複数人で進めるプロジェクトのスタート、サークルや家庭で役割分担を決める場面。もし心当たりがあるなら、ここでの「決めごと」が後々ぜんぶ効いてきます。
- とるべき行動
- 最初に、進め方・役割・約束ごとをはっきりさせておくのがよさそうです。地味で面倒に見えても、ここを飛ばさないこと。みんなが同じルールで動ける状態を作ってから、動き出すといいと思いますよ。
- 気をつけたいこと
- 規律のないまま走り出すと、たとえ最初うまくいっても、後で崩れて凶——原典もそこははっきり戒めています。「とりあえず始めちゃおう」で秩序を後回しにすると、途中で空中分解しがち。順番だけは間違えないでくださいね。
この爻が陰陽反転すると、卦は地澤臨(ちたくりん)に変わります(之卦)。
九二(きゅうじ)
白文在師中吉、无咎、王三錫命。
書き下し師(し)に在(あ)りて中(ちゅう)なれば吉(きち)、咎(とが)无(な)し。王(おう)三たび命(めい)を錫(たま)う。
やさしく読み解くと
- ひとことで言うと
- あなたが現場の中心。バランスを保てば、信頼が重なっていく段階です。
- 今は、こんな時
- 大勢の真ん中に立って、実際に物事を動かしている——そんな立場にいませんか?リーダーや責任者として現場をまとめている、頼られて相談が集まってくる、上からも下からも期待されている。この段階は、あなたが偏らず、中庸(ちょうどよさ)を保って采配できている時です。まっとうにやっていれば吉、咎められることはありません。それどころか、王が三度も任命を重ねるように、信頼されてさらに大きな役目を任されていく流れですよ。
- とるべき行動
- 今は、自分の持ち場でどっしり中心を引き受けるのがよさそうです。上に対しては誠実に、下に対しては公平に。やりすぎず引きすぎず、ちょうど真ん中を意識してみてください。その姿勢が、次の信頼を呼びますよ。
- 気をつけたいこと
- 信頼が集まる時ほど、独断専行に傾きやすいもの。「自分が中心だから」と暴走すると、せっかくの信頼が逆に重荷になります。中心にいる自覚と、謙虚さをセットで持っていたい時ですね。
この爻が陰陽反転すると、卦は坤為地(こんいち)に変わります(之卦)。
六三(りくさん)
白文師或輿尸、凶。
書き下し師(いくさ)或(ある)いは尸(しかばね)を輿(の)す、凶(きょう)。
やさしく読み解くと
- ひとことで言うと
- 力不足のまま無理に進むと、痛手を負いやすい段階かもしれません。
- 今は、こんな時
- 実力や準備が追いついていないのに、勢いや見栄で前へ出ようとしている——そんな危うさ、ありませんか?荷が重い役を引き受けてしまった、明らかに準備不足なのに勝負をかけようとしている、複数人で動くのに指揮系統がバラバラ。原典は、無理な進軍が「屍を車に乗せて帰る」ような大きな痛手につながる、とはっきり凶を告げています。
- とるべき行動
- 今は、無理押しをいったん止めるのがよさそうです。背伸びして突っ込むより、体勢を立て直す・人に任せる・仕切り直す。勇気を出して「いったん退く」を選ぶことが、結果的にいちばん傷を浅くしますよ。
- 気をつけたいこと
- いちばん危ないのは、引っ込みがつかなくなって意地で進むこと。「ここまで来たんだから」と無理を重ねると、被害が大きくなりがち。撤退は負けではなく、賢い判断だと思ってくださいね。
この爻が陰陽反転すると、卦は地風升(ちふうしょう)に変わります(之卦)。
六四(りくし)
白文師左次、无咎。
書き下し師(いくさ)左(ひだり)に次(やど)る、咎(とが)无(な)し。
やさしく読み解くと
- ひとことで言うと
- 引いて構え直す段階。退くことが、ちゃんとした正解になる時です。
- 今は、こんな時
- 今は攻めの局面ではなく、いったん退いて陣形を整える時——そんな空気を感じていませんか?勝ち目の薄い勝負を前に一歩下がる、無理せず守りに回る、態勢を立て直すために距離を置く。前に進めないことを「後ろ向き」と感じてしまうかもしれません。でも今は、退くことそのものが理にかなった一手なんです。
- とるべき行動
- 思い切って、引いて構えるのがよさそうです。撤退・保留・様子見——それを「逃げ」ではなく「戦略」として選んでみてください。無理に攻めず退いておけば、咎められることはありませんから、安心して体勢を整えていいと思いますよ。
- 気をつけたいこと
- ただ、退くのと投げ出すのは違います。完全に手を引いて放り出すのではなく、「次に動けるように構えておく」のが今の退き方。立て直す目的を忘れずに、距離を取りましょう。
この爻が陰陽反転すると、卦は雷水解(らいすいかい)に変わります(之卦)。
六五(りくご)
白文田有禽、利執言、无咎。長子帥師、弟子輿尸、貞凶。
書き下し田(た)に禽(とり)有り、言(げん)を執(と)るに利(よろ)し、咎(とが)无(な)し。長子(ちょうし)師(し)を帥(ひき)い、弟子(ていし)尸(しかばね)を輿(の)せば、貞(てい)なれども凶(きょう)。
やさしく読み解くと
- ひとことで言うと
- 正当な理由があれば動いていい段階。ただし「誰に任せるか」がすべてです。
- 今は、こんな時
- 向こうから害になるものが入り込んできて、対処せざるを得ない——畑を荒らす獲物に手を打つように、正当な理由のある「動くべき場面」が来ていませんか?理不尽な相手に対応する、放置できない問題に手を入れる、守るために声を上げる。受け身でやり過ごすより、筋を通して動くほうが利のある時です。ただこの段階は、任せる人を間違えると、正しくても凶になる、という分かれ道でもあります。
- とるべき行動
- 動くなら、堂々と筋を通して動くのがよさそうです。そのうえで、いちばん大事なのは人選。経験と実力のある「ふさわしい人」に任せること。能力の足りない人に大事を任せると、せっかくの正しい行動が空回りしてしまいます。誰に委ねるかを、慎重に選んでみてください。
- 気をつけたいこと
- 原典は、未熟な者に指揮を委ねれば「正しくても凶」と戒めています。情や付き合いで人選を甘くしないこと。役割は、好き嫌いではなく「任せられるか」で決めたい時ですね。
この爻が陰陽反転すると、卦は坎為水(かんいすい)に変わります(之卦)。
上六(じょうりく) ― いちばん最後の段階
白文大君有命、開國承家、小人勿用。
書き下し大君(たいくん)命(めい)有り。国(くに)を開き家(いえ)を承(う)く。小人(しょうじん)は用(もち)うる勿(なか)れ。
やさしく読み解くと
- ひとことで言うと
- 一区切りついて、成果を分かち合う段階。ただし人事は慎重に。
- 今は、こんな時
- 長かった戦いがひと段落して、いよいよ「功に報いる・締めくくる」局面に来ていませんか?プロジェクトの完了と振り返り、頑張った仲間への評価や分配、次の体制づくり。ここまで来たのは、支えてくれた人たちのおかげですよね。功績をきちんと認めて、それぞれに居場所を用意していく——そういう実りの時です。
- とるべき行動
- 貢献してくれた人を、ちゃんと評価して報いるのがよさそうです。手柄を独り占めせず、役割や居場所を分かち合ってみてください。ただし、人を引き上げる時の基準だけは慎重に。力はあっても私欲で動くような人を、要職に就けるのは避けたい——原典がはっきり戒めている一点です。
- 気をつけたいこと
- 勝った後・終わった後の「人事」で、つい情や勢いで決めてしまいがち。ここを誤ると、せっかくの成果が次のトラブルの火種になります。締めくくりの局面こそ、誰を立てるかを冷静に見極めてくださいね。
この爻が陰陽反転すると、卦は山水蒙(さんすいもう)に変わります(之卦)。
白文は朱熹『周易本義』系の経文(中國哲學書電子化計劃 ctext.org・パブリックドメイン)、書き下しは当サイトによる訓読です。
読んで学ぶのもいいですが、易は「自分の問いで引いてみる」と、ぐっと身近になりますよ。
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