風天小畜

ふうてんしょうちく

力は溜まってきたのに、まだ実らず足踏みしている時

上卦:巽(風) 下卦:乾(天)

卦辞 ― この卦全体のことば

白文小畜、亨。密雲不雨、自我西郊。

書き下し小畜(しょうちく)は、亨(とお)る。密雲(みつうん)あれども雨ふらず、我(わ)が西郊(せいこう)よりす。

やさしく読み解くと

今のあなたの周りには、ものごとがあと一歩で動き出しそうなのに、なかなかそこまで届かない——そんな、もどかしい空気が流れているようです。

空には雨を降らせそうな雲がびっしり満ちているのに、まだ一粒も落ちてこない。エネルギーは確かに溜まっているのに、決定打にならず、小さく蓄えながら待っている。そんなイメージですね。

あと少しで成果が出そうな仕事、もう少しで距離が縮まりそうな相手、計画は整ったのに動き出せない——そんな「あと一歩」の局面で、この卦はよく出ます。

ここで大事なのは、今は大きく押し切る時ではなく、小さく整えながら機を待つ時だ、ということ。

テーマは「小さく蓄えて、無理せず待つ」。ただし、その待ち方が実りにつながるか、ただの足踏みで終わるかは、あなたが今どの段階にいるかで変わってきます。だから、この先の「今いる段階」が、いちばんの答えになりますよ。

六つの爻辞 ― 段階ごとのことば

卦には、下から上へ六本の「爻(こう)」があります。同じ卦でも、どの爻に注目するかで場面が変わっていく——一つの物語の六つの場面だと思ってください。下から順に見ていきましょう。

いちばん下の爻

初九(しょきゅう) ― いちばん最初の段階

白文復自道、何其咎、吉。

書き下し復(かえ)るに道よりす。何(なん)ぞ其れ咎(とが)あらん、吉(きち)。

やさしく読み解くと

ひとことで言うと
本来の道へ戻る時。筋を外していなければ、心配いりません。
今は、こんな時
少し脇道にそれていたものを、自分の本来のやり方・本来の場所に戻していく——そんな段階かもしれません。最近ちょっと無理をして自分らしくないことをしていた、流されて余計なことに手を出していた、付き合いで本筋から離れていた…なんてこと、ありませんか?もし心当たりがあるなら、今は静かに「元の自分の道」に立ち返るタイミングなんだと思います。
とるべき行動
背伸びをやめて、自分が一番しっくりくるやり方に戻してみるといいと思いますよ。正しい筋に戻りさえすれば、咎められることはなく、むしろ良い流れに乗れる時です。遠回りしたように見えても、それは間違いじゃありませんでしたから、安心してくださいね。
気をつけたいこと
「せっかくここまで来たし」と惰性で脇道を続けると、じわじわ消耗していきます。戻ることを「後退」と思わないこと。今は引き返す勇気が、そのまま吉につながりますよ。

この爻が陰陽反転すると、卦は巽為風(そんいふう)に変わります(之卦)。

下から2番目の爻

九二(きゅうじ)

白文牽復、吉。

書き下し牽(ひ)かれて復(かえ)る、吉(きち)。

やさしく読み解くと

ひとことで言うと
仲間と一緒に正しい道へ。連れ立って戻れる、心強い段階です。
今は、こんな時
一人で抱え込まず、誰かに引っ張ってもらいながら本筋に戻っていく——そんな時かもしれません。信頼できる同僚や友人が「こっちだよ」と声をかけてくれた、似た立場の仲間と足並みをそろえて動き直している、先に戻った人につられて自分も戻れた。そんな心当たり、ありませんか?今は、孤独に頑張るより、人とつながって進むほうがうまくいく段階です。
とるべき行動
意地を張らず、誘ってくれる人・一緒に行ける人の手を素直に取ってみるのがよさそうです。人と連れ立って正道に戻るこの形は、吉ですよ。「自分だけで」とこだわらず、半歩、仲間に合わせてみてください。
気をつけたいこと
ただ、ただ流されて付いていくのとは違います。「自分も戻りたい」という気持ちがあってこその同行です。方向だけは、ちゃんと自分でも確かめておきましょう。

この爻が陰陽反転すると、卦は風火家人(ふうかかじん)に変わります(之卦)。

下から3番目の爻

九三(きゅうさん)

白文輿說輻、夫妻反目。

書き下し輿(くるま)輻(ふく)を說(だっ)す。夫妻(ふさい)反目(はんもく)す。

やさしく読み解くと

ひとことで言うと
無理に進もうとして、軋みが出やすい段階。いったん止まる時かもしれません。
今は、こんな時
勢いで前に進もうとしたら、車輪が外れて動けなくなる——そんなふうに、押し切ろうとした結果かえって物事が止まり、身近な人とぶつかってしまう時です。仕事を強引に進めて足並みが乱れた、パートナーや家族と意見が衝突して気まずい、焦って動いたら肝心なところでつまずいた…なんてこと、ありませんか?もし思い当たるなら、今は力任せが裏目に出やすい局面です。
とるべき行動
ここはいったん歩みを止めて、態勢を整え直すのがよさそうです。相手を言い負かそうとせず、まず関係のひび割れを手当てする。「進めない時は進めない」と認めて、無理押しをやめてみてください。止まることは、ここでは賢い選択です。
気をつけたいこと
意地になって押し通そうとすると、進めないうえに大切な人との溝まで深まりかねません。うまくいかないのは、あなたの力不足ではなく「今は進む時じゃない」というサイン。自分も相手も責めすぎないでくださいね。

この爻が陰陽反転すると、卦は風澤中孚(ふうたくちゅうふ)に変わります(之卦)。

下から4番目の爻

六四(りくし)

白文有孚、血去惕出、无咎。

書き下し孚(まこと)有り。血(ち)去(さ)り惕(おそ)れ出(い)づ、咎(とが)无(な)し。

やさしく読み解くと

ひとことで言うと
誠実さが危険を遠ざける段階。怖い局面でも、心配は要らなくなります。
今は、こんな時
ヒヤッとするような場面にいるけれど、まごころを尽くすことで、その危うさが少しずつ消えていく——そんな時かもしれません。緊張する交渉や対立の渦中にいる、強い相手に挟まれて気を張っている、トラブルに巻き込まれそうでハラハラしている。そんな心当たり、ありませんか?今は、力でねじ伏せるより、誠実さが身を守ってくれる段階です。
とるべき行動
駆け引きや見栄を捨てて、正直に、誠意をもって向き合ってみるといいと思いますよ。まごころが通じれば、流血の危険も恐れも去って、咎められることはない時です。怖くても、隠したり取り繕ったりせず、誠実さ一本で進んでみてください。
気をつけたいこと
ここで保身に走って嘘やごまかしを重ねると、せっかく遠ざかった危険をまた引き寄せてしまいます。あなたの誠実さがいちばんの盾。それを手放さないことだけ、気をつけていきましょう。

この爻が陰陽反転すると、卦は乾為天(けんいてん)に変わります(之卦)。

下から5番目の爻

九五(きゅうご)

白文有孚攣如、富以其鄰。

書き下し孚(まこと)有りて攣如(れんじょ)たり。富(とみ)を以(もっ)て其の鄰(となり)とす。

やさしく読み解くと

ひとことで言うと
誠で人と結ばれ、豊かさを分かち合える段階かもしれません。
今は、こんな時
あなたの誠実さが周りの人としっかり結びついて、持っているものを自然と分け合える——そんな時です。信頼で結ばれた仲間とお互い助け合えている、自分の余裕や知恵を周りに回せている、人から頼られ、また自分も頼れている。そんな手応え、ありませんか?今は、一人で抱え込むより、分かち合うことで全体が豊かになる段階です。
とるべき行動
もしそうなら、出し惜しみせず、自分の持っているもの(力・情報・気遣い)を隣の人に回してみるといいと思いますよ。誠実さで人とつながり、富や恵みを分け合うこの形は、とても良い流れです。「独り占めしない人」のところに、めぐりめぐってさらに良いものが集まってきますよ。
気をつけたいこと
ただ、見返りを期待して与えると、関係がぎくしゃくします。分かち合いは「したいからする」もの。損得勘定が前に出ないよう、そこだけ気をつけていきましょう。

この爻が陰陽反転すると、卦は山天大畜(さんてんたいちく)に変わります(之卦)。

いちばん上の爻

上九(じょうきゅう) ― いちばん最後の段階

白文既雨既處、尚德載、婦貞厲。月幾望、君子征凶。

書き下し既(すで)に雨ふり既に處(お)る。德(とく)を尚(たっと)びて載(の)す。婦(ふ)貞(てい)なれば厲(あや)うし。月(つき)望(ぼう)に幾(ちか)し、君子(くんし)征(ゆ)けば凶(きょう)。

やさしく読み解くと

ひとことで言うと
蓄えが満ちきった段階。ここから先へ押し進むのは、ぐっとこらえる時です。
今は、こんな時
待ち望んだ雨がようやく降って、蓄えてきたものが満ちきった——そんな「もう十分」の地点に来ています。長く積み重ねてきた成果がひとまず実った、欲しかったものが手に入った、やりたかったことがおおむね形になった。そんな心当たり、ありませんか?満ちた月がこれ以上は欠けていくしかないように、今はピークに達した局面なんです。
とるべき行動
ここでは、いったん立ち止まって今あるものを大事に味わうのがよさそうです。「まだもっと」とさらに前へ突き進むより、得たものを守り、整える。満ち足りた今を素直に喜んで、無理に次の勝負に出ないでおく——その引き際の感覚が、今いちばん効きますよ。
気をつけたいこと
満ちきった今、欲を出してさらに押し進むと、凶につながりやすい時です。「ここでやめたらもったいない」と勢いのまま突っ込むと、せっかく満ちたものを崩しかねません。今は攻めではなく、守りと感謝の時。満ちたら欠ける、という自然の流れを思い出して、足を止める勇気を持ってくださいね。

この爻が陰陽反転すると、卦は水天需(すいてんじゅ)に変わります(之卦)。

白文は朱熹『周易本義』系の経文(中國哲學書電子化計劃 ctext.org・パブリックドメイン)、書き下しは当サイトによる訓読です。

読んで学ぶのもいいですが、易は「自分の問いで引いてみる」と、ぐっと身近になりますよ。

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